Musician Interview
2022年03月18日(金):「エルパの音楽家 打楽器 Sさん(M05069)」
コンサート等で大活躍の打楽器(マリンバ・カーヌーン等)奏者、Sさんにインタビューをいたしました♪
Q.打楽器・カーヌーンを始めたきっかけは?
・打楽器の経緯
幼少よりピアノを習っていて、音楽自体は子どもの頃より大好きでした。
小学校の時、音楽委員会の副委員長を務めていたところ、吹奏楽部の先生が入部を勧めてくれました。
その際「サックスとパーカッションどっちがいい?」と言われて、なんだかきらきらした名前ということでパーカッションを選んだら、
ただの打楽器で衝撃を受けつつも、次から次へとたくさんの楽器を教えてもらいとっても楽しくなってしまいました。
打楽器の中でも、ソロでも演奏出来るマリンバに魅力を感じ、中学校では吹奏楽部を続けながらマリンバ教室へと通い、音高、音大へと進みました。
当初は吹奏楽部の顧問の先生になりたいと思っていましたが、マリンバ界の第一人者のお一人である安倍圭子先生のリサイタルを高校生の時に見て、マリンバの魅力と先生の音楽家としての生き様に感銘し、マリンバ奏者として生きることを決めました。
・カーヌーンの経緯
高校生の時に見たトルコと日本のドキュメンタリーを見て、その友好の歴史と、トルコの美しさ、ベリーダンスの煌びやかさとその音楽に魅力を感じ、大学では民族打楽器のグループレッスンで、
ダルブッカという中東の太鼓を担当しました。
その後大学院生の時に、趣味としてフラメンコかベリーダンスを習いなさいと師匠に助言いただき見に行ったショーで「中東ではとても重要な伝統楽器で、マリンバみたいな楽器があるよ。日本では弾く人がほとんどいないから、今なら稼げるよ」と勧められたのがカーヌーンでした。
当初叩く弦楽器かと思って隔月のライブで演奏することを承諾したら、完全に騙されて(笑)お琴のような楽器でした。
奏者がいないということは先生もいなく、最初はトルコ語の本とYouTubeを頼りに練習を始め、
その後トルコとエジプトで基礎を学び、現場で曲をたくさん覚えました。
師匠にお会いするたび「それであなたはいつダンスを始めるの?」と指摘されるのが定番となりましたが(笑)
世界中には様々な伝統・文化がありますが、どれも比べることもなく本当に素晴らしく、美とは比較することなど出来ないのだと思いました。
西洋音楽だけを学んでいたときに比べ、価値観や考え方が広がり、、マリンバの演奏さえも豊かに変わったと感じています。
2つの楽器を演奏することは容易ではありませんが、私にとってはとても必要であり、どちらも大切な相棒だと思っております。
Q.イベントやコンサートで心掛けていることは?
まずはそのコンサートを聴いてくださる方の立場になってプログラムを組みます。
主催者さまの意向を汲みながら、様々なお客様が楽しいと思ってくださるようなポイントをいくつか用意します。
全てのお客様に全プログラムの中で1曲でも響く曲があったらと思って作っています。
そのためヴァリエーションやジャンルは多岐にし、コンセプトや編成などで統一感を持たせています。(リサイタルなど自主企画とは違った視点を持っています)
そして、その中にも「自分らしさ」や「その楽器らしさ」を盛り込みます。
もちろんみなさんが知っている曲、テーマに沿った曲を選ぶことは大事ですが、その楽器のために作られた作品はやはりその楽器らしさを伝えることが出来るサウンドになると思っています。
MCやプログラムの流れで、普段クラシックや中東音楽などを聴かないお客様にも、自然な流れで聴いて楽しんでいただけるように、MCやプログラムノートの言葉一つにしてもイメージしやすい世界観を、敢えて作って組むことで、「ここでしか聞けないコンサート」を実現しています。
それは「聴衆の耳や感受性を育てる」というのも演奏家の大事な使命だと思っているからです。
これはバランスが難しいですが、主催者の方と相談し、チャレンジするようにしています。
Q.印象に残っているお仕事は?
大手商業施設での野外演奏です。
今回は私にとっても初めてのカーヌーンで、みなさまの知っている曲のみを演奏するというお仕事でした。
マリンバでは何度も経験があるものも、カーヌーンでは本当に初めてでした。
お客様に伝わるかどうか、とても不安でしたが、当日はこのイベントをいつも楽しみにされているという常連のかたや、道ゆく方々が、冷たい雨が降る中、足を止めて手拍子や拍手、声援などをたくさんいただき、とても良いコンサートとなりました。
ジブリやディズニー、昭和歌謡、最新のヒット曲まで、全世代に伝わる音楽を選びましたが、
最後に紅蓮華を演奏した際に、子供達がステージの袖に来て、覗き込むように演奏を聴いてくれました。本当に感動しました。
カーヌーンは日本ではほとんどの人が知らなくて、素通りされてしまうことがほとんどでした。
でも作品の持つパワーと、この現場でのコンサートが地域の方に愛されて、お客さまが心から楽しまれている姿を肌で感じて、とても良い経験をさせて頂けたと思いました。